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2023/04/01 13:57
岡山県美作市で製作されているヤマノネ硝子さんの工房にうかがいました。
岡山の北東部に位置する美作市は、岡山空港から車で約1時間ほど。
岡山市内を離れると徐々に山々が増え、清らかな川が流れています。
丁度11月の紅葉シーズンにうかがったこともあり、赤や黄色に染まる山々が美しかったです。
ヤマノネ硝子さんは、加藤岳さん、田中淳子さんのお二人で製作されているガラス工房。
伝統的な形成技法である「吹きガラス」で製作されています。
お二人は京都の晴耕社ガラス工房に10年近く勤務された後に独立されました。
活動場所を探す中、岡山の土地と出会い、2022年5月に拠点を移し新たな一歩を踏み出されました。
ヤマノネ硝子さんを知ったきっかけは、偶然、「キナリA」を購入した事にはじまります。
程よい厚みがあり、飲み物を注ぐと更に美しさを増す透明度の高い硝子は日常使いにぴったりです。
我が家では、夏場毎日使うグラスとなっています。
工房に到着すると、丁度「キナリA」を制作されていました。
炉から溶けたガラスを竿の先にとり、息を吹いてふくらませ、整え、ゆっくり冷やす。
溶けたガラスがお二人の手によってあっという間に自宅でつかっているガラスになっていく光景を最初はただじっと見学させて頂きました。
「ガラスに写っていたあの線はこの回転エネルギーの跡だったのか」と答え合わせをするように感覚です。
お二人の無駄のない動きと手際の良さはまさに職人技。その精巧な技術に驚きました。
その後、ご自身で作られた窯や、ガラス原料など工房内を見せていただきましたが、驚くことに、道具なども手作りのものが殆どです。
ガラスの原料は、10種類程を選定・調合してオリジナルのものを使用されています。吹く時に使う型や作品に使う金具等も自身で手がけ「ガラスを吹くだけではなく、そこに至る過程」も大切にされています。
晴耕社ガラス工房で勤務されていた頃から、自分たちで作れるものは作るという教えだったので自然のこととお話されていました。(それにしてもすごい・・・)
硝子に関する事はできる限りご自身で手がける事を大切にされています。一方で主張しすぎず、日常に馴染むということを大切にされています。
加藤さんに最初にお会いした際、話して下さった言葉。
「毎日使う、使いやすいガラスを目指しています。作家というよりは、町工場のような存在でありたいです」
岡山という土地で新しくスタートされたお二人。確かな技術、ガラスへの追求心、モノづくりへの思い。
新しいアイテムも制作されており、今後のお二人の活躍が楽しみです。
《プロフィール》
2011年から京都の晴耕社ガラス工房に勤務。
2019年よりヤマノネ硝子活動を開始し、地元埼玉県熊谷市を拠点に活動を始める。
2021年に岡山県へ移住、2022年5月築炉。
珪砂を主とした硝子原料の調合から、吹く作業までひとつひとつの過程を大切にし、自身の手で行う。
日常風景の中に溶け込む使い勝手の良い日用品を手掛けている。